公正証書遺言の費用はいくら?|公証人の手数料は受け取る人ごとに計算して遺言加算1万3,000円。2025年10月の改定後の表と計算の例

公正証書遺言の費用は、公証人に払う手数料と、戸籍などの書類の代金、証人を頼むときの謝礼、専門家に頼むときの報酬に分かれます。このうち公証人の手数料は、公証人手数料令という政令で額が決まっていて、どの公証役場でも同じです。
手数料の表は、2025年10月1日に改定されました。この記事では、改定後の表で手数料を計算する手順と例、出張のときの加算、自筆証書遺言との費用の違い、令和8年の民法の改正までを、法令と日本公証人連合会の案内で確かめてまとめます。
公正証書で遺言を残したいのですが、財産の額でいくらになるのかが分かりません。古い表と新しい表の両方が出てきて、どちらを見ればよいか迷います。
公正証書遺言の費用は、4つに分かれる
公正証書遺言は、遺言者が公証人と証人2人の前で遺言の内容を告げ、公証人が公正証書にまとめる方式です(民法 第969条)。費用は次の4つに分かれます。
- 公証人の手数料:公証人手数料令で決まる。財産の額と、受け取る人の数で変わる
- 書類の代金:戸籍謄本・印鑑登録証明書・登記事項証明書など
- 証人の謝礼:知人に頼むか、公証役場の紹介や専門家に頼むかで変わる
- 専門家の報酬:文案の作成などを弁護士・司法書士・行政書士に頼んだときだけ
公証人への相談は無料です。専門家に頼まず、自分で公証役場に相談して作れば、4つ目はかかりません。
公証人の手数料は、2025年10月1日に改定された
公証人手数料令の別表が、令和7年政令第263号で改正され、2025年10月1日から施行されました。改定後の額は、同日以後に頼んだ(嘱託した)公正証書に使います。
改定後の手数料の表
遺言で財産を受け取る人ごとに、その人の受け取る財産の価額を、次の表に当てはめます(公証人手数料令 第9条・別表)。
- 50万円以下:3,000円
- 50万円を超え100万円以下:5,000円
- 100万円を超え200万円以下:7,000円
- 200万円を超え500万円以下:1万3,000円
- 500万円を超え1,000万円以下:2万円
- 1,000万円を超え3,000万円以下:2万6,000円
- 3,000万円を超え5,000万円以下:3万3,000円
- 5,000万円を超え1億円以下:4万9,000円
1億円を超える部分は、1億円を超え3億円以下なら4万9,000円に超過額5,000万円までごとに1万5,000円を足します。3億円を超えると、さらに別の加算になります。
改定前の表との違い
改定前は、最も低い区分が「100万円以下5,000円」で、50万円以下の区分はありませんでした。200万円を超える区分は、改定前より高くなっています。
たとえば1,000万円を超え3,000万円以下は、改定前の2万3,000円から2万6,000円になりました。遺言加算も1万1,000円から1万3,000円です。改定前の表で計算すると額が合わないので、計算するときは表の日付を確かめます。
手数料の計算は、受け取る人ごとに出して足す
日本公証人連合会の案内では、手数料は次の順で出します。財産全体の額を表に1回当てはめるのではない点に気をつけます。
- 財産を受け取る人ごとに、受け取る財産の価額を出す
- 1人ずつ表に当てはめて手数料を出し、全員分を足す
- 遺言で分ける財産の合計が1億円以下なら、遺言加算1万3,000円を足す(公証人手数料令 第19条)
価額を算定できないものは、500万円とみなして計算します(公証人手数料令 第16条)。たとえば、お墓などを受け継ぐ人(祭祀主宰者)の指定がこの扱いになることがあります。
原本の枚数と、正本・謄本の手数料
遺言公正証書の原本は、今は電子データで作られます。原本を紙に出力したときの枚数が3枚を超えると、超える1枚ごとに300円が加わります。
遺言者には、原本と同じ内容であることの証明が付いたもの(従来の正本に当たるもの)と、内容を記録したもの(従来の謄本に当たるもの)が交付されます。手数料は、電子データなら1通2,500円、書面なら1枚300円です。
計算の例:3人に分けて財産が合計3,800万円
遺言者が、配偶者に自宅と預金で合わせて2,400万円、長女と長男に預金を700万円ずつ相続させる遺言を、公証役場で作る場合の例です。原本は3枚以内と置いています。

この例の公証人の手数料は、7万9,000円に正本・謄本の分を足した額です。電子データで2通受け取れば5,000円で、合計8万4,000円です。
同じ分け方を改定前の表で計算すると、2万3,000円+1万7,000円×2+1万1,000円で6万8,000円でした。改定で1万1,000円上がる例です。
1人に全部を相続させると、手数料はどうなるか
同じ3,800万円を1人に全部相続させるなら、表の3,000万円を超え5,000万円以下に当たり3万3,000円です。遺言加算を足して4万6,000円になり、3人に分ける例より低くなります。
受け取る人が増えると、1人ずつ表に当てはめるので、手数料が上がることがあります。手数料の額だけで分け方を決めるものではないので、分け方を決めてから額を確かめます。
1億円を超えると、遺言加算はつかない
遺言で分ける財産の合計が1億円を超えるときは、遺言加算1万3,000円はつきません(公証人手数料令 第19条ただし書)。受け取る人ごとの手数料は、同じ表で出して足します。
公証人に出張してもらうときの加算
病気や高齢で公証役場に行けないときは、公証人が自宅や病院、介護施設に出張して作れます。このときは、次の費用が加わります。
- 病床執務加算:遺言加算を足す前の手数料の10分の5(公証人手数料令 第32条)
- 日当:1日2万円。4時間以内なら1万円(第43条)
- 交通費:公証人が現地まで行く実費
上の3人の例で、病院に出張してもらい4時間以内で済んだとすると、6万6,000円の半分の3万3,000円と、日当1万円が加わります。遺言加算を含めた7万9,000円と合わせて12万2,000円で、これに交通費と正本・謄本の分がかかります。
ウェブ会議で作れる場合もある
2025年10月から、公正証書の作成にウェブ会議を使えるようになりました。日本公証人連合会の案内では、公証役場へのアクセスが難しいなどの事情があり、本人確認や意思の確認に支障がないと公証人が認めた場合に、ウェブ会議で作ることができるとしています。
ウェブ会議で作れるかどうかは、事情と遺言の内容で公証人が決めます。出張を頼む前に、公証役場に相談します。
書類の代金と証人の謝礼
公証人の手数料のほかに、書類を取り寄せる代金と、証人に払う謝礼がかかります。どちらも、必要な通数や頼む相手で額が変わります。
そろえる書類と代金
日本公証人連合会の案内では、次の資料を用意します。事案によっては、ほかの資料が要ることもあります。
- 遺言者の印鑑登録証明書(3か月以内)。運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きの身分証明書でもよい
- 遺言者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本・除籍謄本
- 相続人以外に遺贈するなら、その人の住民票など住所が分かるもの
- 不動産があれば、登記事項証明書と、固定資産評価証明書か固定資産税の課税明細書
- 預貯金があれば、通帳かそのコピー
戸籍謄本は1通450円、除籍謄本は1通750円が標準です。書類の代金は、合わせて数千円が目安です。戸籍の集め方は戸籍謄本の取り寄せ方にまとめています。
証人は2人。なれない人がいる
民法 第974条で、次の人は証人になれません。財産を受け取る家族は、証人になれない点に気をつけます。
- 未成年者
- 推定相続人と受遺者、その配偶者と直系血族
- 公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人
証人を自分で用意できないときは、公証役場で紹介してもらえると日本公証人連合会は案内しています。紹介を受けたときの謝礼の目安は、1人7,000円〜1万5,000円程度、2人で1万〜2万円程度です。
専門家に頼むときの報酬
遺言の文案づくりや必要書類の収集、証人を弁護士・司法書士・行政書士に頼むときは、公証人の手数料とは別に報酬を払います。報酬は事務所ごとに決まり、公的な基準はありません。
報酬の目安は、弁護士で10万〜30万円程度、司法書士や行政書士で数万円から20万円程度です。遺言の内容の相談まで頼むか、証人や遺言執行者を頼むかで額は変わるので、見積もりで中身を確かめます。
自分で作るときの手順
専門家に頼まなくても、公証役場に直接相談して作れます。日本公証人連合会の案内では、次の順で進みます。
- 公証役場に電話やメールで相談し、日時を予約する
- 誰に何を相続させるかのメモと、必要な書類を出す
- 公証人が文案を作り、メールなどで確認して直す
- 当日、証人2人の前で内容を告げ、確かめて電子サインをする
手数料は、原則として正本などを受け取る時に、現金かクレジットカードで払います。日本公証人連合会の手数料の案内に、そう書かれています。
自筆証書遺言との費用の違い
自筆証書遺言は、自分で全文を手書きすれば費用はかかりません。法務局の自筆証書遺言書保管制度で預けるなら、保管の申請に1件3,900円がかかります。
保管制度の手数料は、ほかに次のとおりです。遺言者による保管の申請の撤回と、住所などの変更の届出には手数料がかかりません。
- 遺言書の閲覧(モニター):1回1,400円
- 遺言書の閲覧(原本):1回1,700円
- 遺言書情報証明書:1通1,400円(相続人などが請求する)
- 遺言書保管事実証明書:1通800円
法務局に預けない自筆証書は、検認の費用がかかる
法務局に預けていない自筆証書遺言は、亡くなった後に家庭裁判所で検認を受けます。裁判所の案内では、遺言書1通につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が要り、検認済証明書は1通150円分の収入印紙です。
公正証書遺言と、法務局に預けた遺言書は、検認が要りません。検認の期限とほかの手続きの並びは相続の手続きの期限一覧にまとめています。
作り直すときの費用
遺言は、いつでも新しい遺言で書き直せます。公正証書で作り直すときは、新しい遺言の手数料を改めて払います。
遺言の全部か一部を取り消すだけの公正証書は、手数料1万3,000円です(公証人手数料令 第19条第2項)。秘密証書遺言の方式の記載の手数料も1万3,000円です。
家計簿での記録のしかた
遺言の費用は、遺言者が自分のお金から払います。作る前に額を見積もり、払ったものを書いておくと、家族に説明するときにも使えます。
ステップ1受け取る人ごとの財産の額を書き出す20分
誰に何を相続させるかを決め、受け取る人ごとに、預金の残高と不動産の額を足します。不動産は課税明細書の額を仮に書いておき、価額の見方は公証人に確かめます。
ステップ2表に当てはめて手数料を書く10分
1人ずつ改定後の表に当てはめ、全員分を足します。財産の合計が1億円以下なら1万3,000円を足し、正本・謄本を電子データでもらうか書面でもらうかも決めて書きます。
ステップ3書類の代金と謝礼を足す10分
戸籍や証明書の代金、証人を頼むならその謝礼を足して、合計を出します。紙でも表計算でも、同じ手順で出せます。
迷いやすい場面
古い表の額と、公証役場の見積もりが違う
2025年10月1日に手数料の表が改定されたので、改定前の表で計算した額とは合いません。改定後の表は日本公証人連合会の案内と、e-Gov の公証人手数料令で確かめられます。
最終的な額は、遺言の内容と財産の資料を見て公証人が決めます。相談は無料なので、資料をそろえて見積もりを聞きます。
判断能力が落ちてからでは作れない
公証人は、遺言者が判断能力を持って本人の意思で遺言することを確かめてから作ります。認知症が進んでからでは、遺言を作れないことがあります。
判断能力が落ちた後に家庭裁判所が後見人を選ぶ手続きとその費用は、成年後見の費用はいくら?にまとめています。元気なうちに任意後見契約を公正証書で結んでおく方法もあります。
相続税がかかるかも確かめたい
公正証書遺言の手数料は、相続税とは別のお金です。財産の合計が基礎控除を超えるかどうかで、相続税がかかるかが決まります。
基礎控除の額と計算の例は相続税はいくらから?にまとめています。申告の窓口は税務署です。
遺言の方式は、令和8年の改正で変わる
令和8年6月24日に公布された民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)で、遺言の方式が見直されます。施行日は、どれも政令で定める日です。
- 公布の日から1年を超えない範囲内:自筆証書遺言で印を押すことが要らなくなる・証人になれない人の決まりが整理される
- 公布の日から3年を超えない範囲内:法務局の遺言書保管官の前で全文を口述して作る「保管証書遺言」ができる
公正証書遺言の手数料は、今と同じく公証人手数料令で決まります。どちらの施行日もまだ決まっていません。保管証書遺言の手数料も、e-Gov で見られる手数料令(2026年10月10日に確認)にはまだ書かれていないので、施行日が決まった後の法務省の案内で確かめます。
よくある質問
Q公正証書遺言の費用は、全部でいくらですか
公証人の手数料は、受け取る人ごとの額を足し、財産の合計が1億円以下なら1万3,000円を加えます。3人に合計3,800万円を分ける例では7万9,000円で、正本・謄本を電子データで2通受け取ると8万4,000円でした。
Q2025年10月の改定で、何が変わりましたか
手数料の表が改定され、200万円を超える区分と遺言加算が上がりました。遺言加算は1万1,000円から1万3,000円です。
Q財産が1億円を超えると、手数料はどうなりますか
受け取る人ごとの手数料は同じ表で出します。財産の合計が1億円を超えるときは、遺言加算1万3,000円がつきません。
Q証人は誰に頼めばよいですか
未成年者、財産を受け取る家族やその配偶者などは証人になれません。自分で用意できないときは、公証役場で紹介してもらえます。
Q自筆証書遺言なら、費用はかかりませんか
自分で書いて手元に置くなら、費用はかかりません。法務局に預けるなら3,900円で、預けない場合は亡くなった後に検認の費用がかかります。
まとめ
- 公正証書遺言の費用は、公証人の手数料・書類の代金・証人の謝礼・専門家の報酬の4つ
- 公証人の手数料は、2025年10月1日に改定された。受け取る人ごとに表に当てはめて足す
- 財産の合計が1億円以下なら、遺言加算1万3,000円を足す
- 正本・謄本に当たるものは、電子データなら1通2,500円、書面なら1枚300円
- 出張してもらうと、病床執務加算(遺言加算の前の額の10分の5)と日当・交通費が加わる
- 自筆証書遺言を法務局に預けるなら3,900円。預けない自筆証書は検認が要る
- 令和8年の改正で、自筆証書の押印が要らなくなり、保管証書遺言ができる。施行日は政令で決まる
受け取る人ごとに財産の額を書き出し、改定後の表で手数料を見積もれました。資料をそろえて、公証役場の無料相談で額を確かめます。
この記事で参照した公的情報
- 公証人手数料令 第9条・別表(法律行為の目的の価額ごとの手数料=50万円以下3,000円〜5,000万円を超え1億円以下4万9,000円など)・第16条(算定できないときは500万円とみなす)・第19条(遺言の公正証書は別表の額に1万3,000円を加算・目的の価額が1億円を超えるときは加算しない・遺言の取消しは1万3,000円)・第25条(紙に出力した枚数の加算は超える1枚ごとに300円)・第28条(秘密証書遺言1万3,000円)・第32条(病床での作成は加算前の額の10分の5を加算)・第40条・第40条の2(書面は1枚300円・電磁的記録は2,500円)・第43条(日当は1日2万円・4時間以内は1万円と交通費)・令和7年政令第263号附則(令和7年10月1日施行・同日以後の嘱託から)
- 窓口
- e-Gov 法令検索(デジタル庁)
- 確認日
- 確認先
- https://laws.e-gov.go.jp/law/405CO0000000224
- 2 遺言(公正証書遺言は証人2名の前で口頭で告げて作成・相談は無料・手数料は受け取る人ごとに算出して合算・全体の財産が1億円以下なら遺言加算1万3000円・3枚を超えると1枚300円・正本と謄本に相当するものは電子データ1通2500円・書面は1枚300円・病床は50%加算・日当1日2万円(4時間以内1万円)と交通費・必要な資料・証人になれない人と公証役場での紹介・ウェブ会議・遺言検索は無料)
- 窓口
- 日本公証人連合会
- 確認日
- 確認先
- https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
- 12 手数料(手数料は政令で定められている・原則として正本等を交付する時に現金またはクレジットカードで支払う)
- 窓口
- 日本公証人連合会
- 確認日
- 確認先
- https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow12
- 民法 第969条(公正証書遺言=証人二人以上の立会い・遺言の趣旨を公証人に口授)・第974条(証人になれない者=未成年者・推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人)・令和8年法律第45号による改正(自筆証書の押印を要しない・証人の欠格事由の整理は公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日、保管証書遺言の創設は3年を超えない範囲内で政令で定める日に施行)
- 窓口
- e-Gov 法令検索(デジタル庁)
- 確認日
- 確認先
- https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 民法等の一部を改正する法律案(令和8年6月24日公布・遺言制度の見直しのうち押印の任意化等は公布の日から1年を超えない範囲内、保管証書遺言の創設等は3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行)
- 09 手数料(自筆証書遺言書保管制度=遺言書の保管の申請1件3,900円・閲覧(モニター)1,400円・閲覧(原本)1,700円・遺言書情報証明書1通1,400円・遺言書保管事実証明書1通800円・撤回と変更の届出は不要・収入印紙で納付)
- 窓口
- 法務省
- 確認日
- 確認先
- https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令 第1条(遺言書の保管の申請1件3,900円・閲覧1,700円・遺言書情報証明書1,400円・遺言書保管事実証明書800円)
- 窓口
- e-Gov 法令検索(デジタル庁)
- 確認日
- 確認先
- https://laws.e-gov.go.jp/law/502CO0000000055
- 遺言書の検認(遺言書1通につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手・検認済証明書は150円分の収入印紙)
