退職金がもらえないのは違法?|会社に請求できる場合と、自己都合・勤続年数・懲戒解雇の分かれ目

退職金は、法律で会社に支払いが義務づけられているものではありません。勤め先に退職金の決まりが無ければ、退職金が出ないことだけで直ちに違法とはいえません。
一方で、就業規則・退職金規程・雇用契約書に支給の決まりがあり、自分がその条件に当たるのに払われないときは、会社に請求できる場合があります。書かれた決まりが無くても、これまで辞めた人に同じ基準で払われてきたときは、それが請求の根拠になることがあります。
自己都合で辞めた、勤続年数が足りない、懲戒解雇になった、というときは、規程にその場合の扱いがどう書かれているかで答えが変わります。自分の状況に近い行から確かめる表と、無料の相談先をこの記事でまとめます。
自己都合で辞めたら退職金はもらえないのか、会社に請求してよいのかが分かりません。規程のどこを見ればよいのかも迷います。
自分の状況から、請求できるかを見分ける
退職金を請求できるかは、勤め先の決まりの有無と、自分の辞め方がその決まりのどこに当たるかで分かれます。次の表は、状況ごとに、請求できるかの見込みと次にすることを並べたものです。
| いまの状況 | 請求できるか | 次にすること |
|---|---|---|
| 規程も慣行も無い | 請求は難しい | 求人票や説明を探す |
| 規程があり条件に当たる | 請求できる | 書面で支払いを求める |
| 自己都合で減額の表がある | 規程の額まで | 支給率の表で計算する |
| 勤続年数が条件に届かない | 規程どおりなら難しい | 勤続の数え方を見る |
| 規程は無いが毎回出ていた | 請求できる場合あり | 前に辞めた人を確かめる |
| 懲戒解雇で出ないと言われた | 規程と処分しだい | 相談先で確かめる |
| 支払時期を過ぎても入らない | 請求できる | 5年以内に求める |
表は見込みの目安です。最後は、規程の文、これまでの支給の実績、自分の勤続年数や辞めた理由を合わせて判断されるので、迷ったら下の相談先に持っていってください。
退職金は、会社が決めたときに払う義務が生まれる
労働基準法には、会社に退職金を払うよう命じる条文はありません。厚生労働省のモデル就業規則の解説も、退職金制度は必ず設けなければならないものではない、と書いています。
ただし、制度を設けるなら、対象になる人の範囲、額の決め方と計算・支払の方法、支払の時期を就業規則に書くことが、労働基準法 第89条第3号の2で決まっています。出さない場合や減らす場合を設けるときも就業規則に明記する必要があると、モデル就業規則の解説は書いています。
労働契約法 第7条により、労働契約を結ぶときに社員に知らされていた合理的な就業規則の決まりは、労働契約の内容になります。そのため、退職金規程に支給の条件があり、その条件に当たる人は、規程どおりの額を会社に求められます。
自己都合・勤続年数・懲戒解雇は、規程の文で分かれる
出ない理由として言われたのが自己都合・勤続年数・懲戒解雇のどれかなら、規程の中のその場合の文で答えが決まります。規程の「支給しない」「減額する」「勤続」の語を探し、当たりそうな文は条の番号ごと書き写しておくと、相談で話が早くなります。
自己都合で辞めたとき
自己都合で辞めた人にも、退職金規程があれば退職金が出ることはあります。ただ、規程の中で、自己都合のときの支給率を会社都合や定年より低くしている会社もあり、規程どおりに計算した額なら、減っていてもそれだけで違法とはいえません。
厚生労働省のモデル就業規則の規程例(第54条)は、自己都合かどうかで支給を分けていません。勤め先の規程も同じとは限らないので、自己都合の表が別にあるか、どの退職理由に当てはめられたかを確かめます。
自分の退職理由が自己都合として扱われたことに納得できないときは、離職票などの退職理由の記載も合わせて相談します。自己都合と会社都合で平均の額がどれくらい違うかは、退職金の相場にまとめました。
勤続年数の条件に届かないとき
規程に「勤続〇年以上の人に支給する」と書かれていて、その年数に届かないときは、規程どおりなら退職金は出ません。届いているかは、規程の勤続年数の数え方で決まります。
モデル就業規則の規程例(第55条第2項)では、休職した期間は、会社の都合による場合を除いて勤続年数に入れないとしています。試用期間や、契約社員から正社員になる前の期間を入れるかも、会社の規程で決まります。
例として、規程の条件が勤続2年以上の会社で、入社から退職まで2年3か月、そのうち私傷病の休職が5か月だったとします。休職を除く規程なら勤続は1年10か月となり、条件に届かないことになります。
懲戒解雇で出ないと言われたとき
モデル就業規則の第54条は、懲戒解雇された人には「退職金の全部又は一部を支給しないことがある」と書いています。勤め先の規程にこのような定めがあり、懲戒解雇が有効なら、退職金が出ない、または減らされることがあります。
一方、モデル就業規則の解説では、出さない場合・減らす場合を設けるなら就業規則に明記する必要があるとしています。規程にその定めが無いのに懲戒解雇を理由に出さないと言われたときは、どの条を根拠にしているかを会社に聞きます。
懲戒そのものも、労働契約法 第15条で、行為の性質や態様などに照らして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効になります。処分の重さや、全額を出さない扱いに納得できないときは、規程と処分の通知を持って相談先で確かめます。
規程が手元に無い・見つからないとき
就業規則は、見せてもらえる
退職金の決まりは、就業規則の「退職金」の章か、別の「退職金規程」「退職手当規程」に書かれています。見る所は、支給の対象になる人、勤続年数の条件、額の計算、自己都合と会社都合の違い、出さない場合、支払の時期です。
労働基準法 第89条により、常時10人以上の労働者がいる職場では、就業規則を作り、労働基準監督署へ届け出なければなりません。作った就業規則は、掲示・備え付け・書面の交付などで社員に知らせることが第106条で求められています。
人事や総務に頼んでも見せてもらえないときは、書面で求めます。それでも出てこないときは労働基準監督署に相談でき、求めた日と相手、断られたときの言葉のメモは、請求のときの記録にもなります。
10人未満の職場や、パート・契約社員のとき
働く人が10人に満たない職場では、就業規則そのものが無いことがあります。そのときは、入社のときに受け取った雇用契約書や労働条件通知書で、退職金の有無と条件の欄を探します。求人票や会社の案内に退職金の記載があれば、それも残しておきます。
モデル就業規則の解説によると、パートタイムや有期雇用で働く人には、雇い入れのときに退職手当の有無を文書の交付などで示すことが、パートタイム・有期雇用労働法 第6条第1項で決まっています。その文書に退職手当がどう書かれていたかを見ます。
モデル就業規則の解説では、正社員との間で不合理な待遇の差を設けることは同法 第8条・第9条で禁止されているとしています。退職金の扱いが正社員と違うときは、違いの中身と理由の説明を会社に求められます(同法 第14条第2項)。
規程が無いときは、これまでの支給の実績
宮城県の労働相談の案内では、退職金は就業規則などで定めるものだと説明しています。そのうえで、定められていなくても、慣行で払われていることが確かめられたときや、個別に同意があったときは、請求の根拠になることがあると書かれています。
慣行といえるかは、前に辞めた人たちに、同じような基準で繰り返し払われてきたかで見られます。前に辞めた同僚が退職金を受け取っていたか、給与明細に退職金の積立の欄があったか、入社のときに退職金の説明を受けたかを書き出しておきます。
中小企業退職金共済(中退共)に入っているか
勤め先が中小企業退職金共済(中退共)に入っていれば、その分の退職金は、会社ではなく中退共から払われます。中退共の「加入事業所検索」で、都道府県と事業所名を入れると、入っているか(前に入っていた事業所も含む)を調べられます。
掲載を了承しなかった事業所は検索に出ないので、出てこなくても入っていないとは限りません。入っていれば、会社から「退職金共済手帳」を受け取り、辞めた本人が請求書を中退共に送ります。
払われる時期と、請求できる期間
支払の時期は規程で決まる
退職金をいつ払うかは、規程の支払の時期の条で決まります。モデル就業規則の解説も、支払の方法と時期は各企業が実情に応じて定めるとしています。
退職した人が請求したとき、会社は7日以内に賃金を払うことが労働基準法 第23条で決まっています。退職手当については、群馬労働局の案内では、あらかじめ定められた支払時期に払うこととなり、時期を定めていない場合は請求日から7日以内に払わなければならない、と説明されています。
額に争いがあるときも、会社が認めている部分は、同じ期間の中で払うことになっています。規程の支払日を過ぎても入らないときは、まず会社に入金の予定日を文字で確かめます。
請求できる期間は5年
退職金を請求できる期間は、労働基準法 第115条と附則第143条で、請求できる時から5年です。毎月の給料(当分の間3年)より長い期間ですが、過ぎると請求できなくなるので、規程の支払日を起点に早めに動きます。
払われないときに動く順番
会社に聞き、書面で支払いを求める
まず人事や総務に、退職金が出ない理由と、根拠にしている規程の条を聞きます。口頭の答えは、日付・相手・中身をメモに残し、メールなど文字で残る形でも聞き直します。
規程の支給率に自分の基本給と勤続年数を当てはめて、求める額を出しておきます。自分が条件に当たることは、入社日と退職日が分かる雇用契約書、給与明細、退職の届けの控えなどで示せます。
払われないときは、求める額と根拠の条を書いて、書面で支払いを求めます。送った日付と文面を後から示せるように、内容証明郵便を使う方法があります。
書面の書き方と、裁判所の手続き(支払督促・少額訴訟・労働審判など)は、給料が未払いのときにまとめました。退職金を求めるときも、同じ流れで進められます。
総合労働相談コーナーを探して相談する
会社が応じないときの相談先は、勤め先がある都道府県の総合労働相談コーナーです。厚生労働省の頁「総合労働相談コーナーのご案内」で都道府県名を選ぶと、同じ頁の中の、その都道府県のコーナーの所在地・電話番号・開庁時間の表に移ります。
コーナーは都道府県労働局や労働基準監督署の中などに378か所あり、予約は要らず、費用もかかりません。閉まっているのは土日祝日と、12月29日から1月3日の年末年始です。
相談には、書き出した規程の文、勤続年数が分かる書類、会社の説明のメモ、送った書面の控えを持っていきます。法律の違反の疑いがあれば労働基準監督署などに取り次がれ、会社との話し合いを進めたいときは、助言・指導やあっせんの案内を受けられます。
ほかの相談先
- 労働基準監督署:規程で決まった退職金が払われないときに相談できます。指導が行われるのは法律の違反があるときなので、慣行の有無のような争いでは、指導まで進まないことがあります。
- 労働条件相談ほっとライン:厚生労働省の委託事業の電話相談で、月曜から金曜の17時から22時と、土日祝日の9時から21時に受けます(12月29日から1月3日を除く)。名前を言わずに無料で相談できますが、会社を指導することはできません。
- 都道府県の労働委員会:宮城県の案内では、県の労働委員会の「個別労使紛争のあっせん」を使える場合があるとしています。ほかの都道府県で使えるかは、その都道府県の労働委員会の頁で確かめます。
- 弁護士・法テラス:額が大きいときや、懲戒解雇の有効性を会社と争うときは、弁護士に相談する道もあります。収入などが基準に合う人は法テラスで無料の法律相談を受けられ、条件は法テラスの費用で確かめられます。
退職金を当てにしていた支払いと家計簿
退職金を、カードの残りや辞めた後の住民税などの支払いに充てる予定だったときは、入金を待たずに、期日の近い支払いから並べます。期日を過ぎる前に支払先へ相談すると、払い方を変えられる場合があります。
辞めた後の健康保険・年金・住民税の手続きとお金の流れは、退職後の手続きとお金にあります。暮らしのお金が回らないときは住んでいる地域の自立相談支援機関に相談でき、ほかの公的な窓口は生活費が足りないときにまとめました。
家計簿や予算に退職金の見込みを入れていた場合は、払われると決まるまで収入の欄から外します。そのうえで「退職金(請求中)」の行を別に作り、求めた額と、求めた日、会社の答えを書いておきます。
入金があったら、その月の収入に入れて、別の行を消します。退職金にかかる税金と手取りは、退職金の税金にあります。
よくある質問
Q自己都合だと退職金はもらえませんか
規程に自己都合の人にも支給すると書かれていれば、もらえます。ただし、自己都合の支給率を低くしている規程もあるので、規程の表に自分の勤続年数を当てはめて額を確かめます。
Q退職金規程が無い会社では、あきらめるしかありませんか
規程が無くても、これまで辞めた人に同じ基準で払われてきた慣行や、個別の約束があれば、請求の根拠になることがあります。前に辞めた人の受け取りの有無や、求人票・入社の説明を確かめて、相談先に持っていきます。
Q懲戒解雇だと、退職金は必ず出ませんか
必ず出ないわけではありません。規程に懲戒解雇のときの不支給・減額の定めがあるか、懲戒解雇そのものが有効かで変わるので、規程と処分の通知を持って相談先で確かめます。
Qいつまで請求できますか
退職金を請求できる期間は、請求できる時から5年です。過ぎると請求できなくなるので、規程の支払日から数えて早めに相談します。
まとめ
- 退職金は法律で支払いが義務づけられていないので、決まりが無ければ、出ないだけでは直ちに違法とはいえない
- 就業規則・退職金規程・雇用契約で支給が決まり、条件に当たるのに払われないときは、請求できる場合がある
- 規程が無くても、同じ基準で払われてきた慣行や個別の約束が、請求の根拠になることがある
- 自己都合の減額や勤続年数の条件は、規程どおりなら違法ではない(規程の表と勤続の数え方を確かめる)
- 懲戒解雇で出さない・減らすには規程の定めが要り、懲戒が無効になる場合もある(労働契約法 第15条)
- 支払は規程の時期に、請求できる期間は請求できる時から5年
- 会社が応じないときは、勤め先の都道府県の総合労働相談コーナー(無料・予約不要)か労働基準監督署へ
この記事で参照した公的情報
- 労働基準法(第23条 労働者の死亡又は退職の場合に権利者の請求があったときは7日以内に賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還する・争いがある場合は異議のない部分をその期間中に支払う・第89条 常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し届け出る・第3号の2 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項・第106条 就業規則の周知・第115条と附則第143条 退職手当の請求権はこれを行使することができる時から5年間)(2026-07-17 施行の版。未施行の版 2027-04-01 施行・2028-12-23 施行で第115条が2項に分かれるが、退職手当の5年間は変わらず、第23条・第89条は同じ文)
- 窓口
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 確認日
- 確認先
- https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 労働契約法(第7条 合理的な労働条件が定められている就業規則を周知させていた場合は労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件による・第15条 懲戒が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合は権利の濫用として無効)(2020-04-01 施行の版で、未施行の版は無い)
- 窓口
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 確認日
- 確認先
- https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128
- モデル就業規則(令和7年12月版・第54条 労働者が退職し又は解雇されたときは退職金を支給する。ただし第68条第2項により懲戒解雇された者には退職金の全部又は一部を支給しないことがある・解説=退職金制度は必ず設けなければならないものではないが、設けたときは適用される労働者の範囲・支給要件・額の計算及び支払の方法・支払の時期などを就業規則に記載する。不支給事由又は減額事由を設ける場合は就業規則に明記する必要がある・第55条第2項 休職の期間は会社の都合による場合を除き勤続年数に算入しない(規程例)・第56条の解説 支払方法と支払時期は各企業が実情に応じて定める・パートタイム・有期雇用労働者には雇入れに際して退職手当の有無を文書の交付等で明示(パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項)・不合理な待遇差の禁止(同法第8条・第9条)・待遇の相違の内容と理由は求められたら説明する(同法第14条第2項)・懲戒の事由の解説(労働契約法第15条))
- 賃金支払いに関する事項のあらまし(退職手当はあらかじめ定められた支払時期に支払うこととなるが、支払時期を定めていない場合には請求日から7日以内に支払わなければならない・額などに争いがある場合は異議のない部分を請求日から7日以内に支払う)
- 労働相談Q&A 退職金がもらえないとき(退職金は法律に定めがなく会社が就業規則等で定めるもの・定めが無くても慣行や個別の同意が請求の根拠になることがある・過去に退職した人が退職金をもらっていたかを確かめる・総合労働相談コーナーと県の労働委員会の個別労使紛争のあっせん)
- 中小企業退職金共済(加入事業所検索=都道府県と事業所名で検索・過去に加入していた事業所も含む・掲載を了承しなかった事業所は載らない・退職金請求手続きの流れ=事業主から退職金共済手帳を受け取り、退職した本人が請求書を中退共に送る)
- 窓口
- 独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部
- 確認日
- 確認先
- https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/kinrou/kensaku/index.php
- 総合労働相談コーナーのご案内(あらゆる分野の労働問題・予約不要で利用は無料・土日祝日と年末年始は閉庁・助言・指導やあっせんの案内・法律違反の疑いがあれば労働基準監督署などに取り次ぐ・各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などの378か所・都道府県ごとの所在地)
- 労働条件相談「ほっとライン」(月〜金17時から22時・土日祝日9時から21時・12月29日から1月3日を除く・誰でも無料・匿名でも相談できる・ほっとラインから事業場への指導等はできない・厚生労働省の委託事業)
- 窓口
- 厚生労働省(確かめよう労働条件)
- 確認日
- 確認先
- https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/lp/hotline/
