奨学金が返せないとき|減額返還と返還期限猶予の違いと、収入の基準

奨学金の返還が重いと感じたとき、いちばんしてはいけないのは黙って止めることです。日本学生支援機構には、返せないときのための制度が用意されています。
この記事では、減額返還・返還期限猶予・返還免除の3つを分けて説明します。どれも機構の案内で確かめた内容だけを書きます。
毎月の奨学金の返還が重くて、生活費を削って払っています。このままだと払えなくなりそうで不安です。
延滞する前に願い出るのが、いちばん大事
制度を使うには条件があります。減額返還の適用条件の1つは、願出および審査の時点で延滞していないことです。
延滞すると選べる道が減ります。延滞してから使える制度もありますが、手続きが増え、延滞金の扱いも別の話になります。
機構の案内でも急ぐよう示されています。災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合は、延滞する前にすみやかに手続きを行うよう書かれています。
願い出はインターネットでできます。スカラネット・パーソナルからの願出が案内されていて、できない場合は願出用紙を郵送する形です。
相談先もあります。奨学金相談センター(ナビダイヤル0570-666-301・平日9時から20時、祝日と年末年始を除く)で聞けます。
自分の奨学金の種類と返し方を確かめる
使える制度は、借りている奨学金の種類と返し方で変わります。日本学生支援機構の奨学金には、返済が要らない給付奨学金と、返済が要る貸与奨学金があります。
貸与奨学金は、利子の付かない第一種奨学金と、利子の付く第二種奨学金に分かれます。両方を借りているときは、どちらの分の返還かを分けて確かめます。
返還は、貸与が終わった翌月から数えて7か月目に始まります。月賦返還なら、1回目の振替日はその月の27日で、2回目からは毎月27日に口座から引き落とされます。
返し方には、毎月の額が決まっている定額返還方式と、所得に応じて額が変わる所得連動返還方式があります。所得連動返還方式は、平成29年度以降に第一種奨学金に採用された人に関わる方式として案内されています。
注意が要るのは、第一種奨学金で所得連動返還方式を選んでいる場合です。機構の案内では、この場合は減額返還制度を使えず、返還期限猶予の利用を検討するよう示されています。
自分がどれに当たるかは、スカラネット・パーソナルか、貸与が終わるときに配られる返還のてびきで確かめます。在学中の奨学金の書き方は大学生の生活費にまとめました。
減額返還と返還期限猶予の、収入の基準が違う

図は、経済困難を理由にするときの収入等の基準です。2つの制度で基準が違うのが分かります。
減額返還のほうが広く取られています。給与所得の方は年間収入400万円以下、本人が扶養している子供が2人の場合は500万円以下、3人以上の場合は600万円以下です。
給与以外の所得がある場合は別の基準です。年間所得金額300万円以下で、子供が2人の場合は400万円以下、3人以上の場合は500万円以下とされています。
返還期限猶予は基準が狭くなります。給与所得の方は年間収入300万円以下、給与所得以外の所得のある方は年間所得200万円以下です。
基準を超えていても道があります。被扶養者がいる場合や親への援助がある場合などは、一定額を控除して収入基準以下になれば願い出が可能とされています。
減額返還では控除額も示されています。本人の被扶養者について1人につき38万円を収入・所得金額から控除することができます。
卒業したばかりのときは扱いが違います。卒業翌年の6月以降に新たな所得証明書が発行されるまでは、証明書の添付なしで審査可能とされています。
減らせる割合と、使える年数

図は、2つの制度の中身の違いです。減らすのか、待ってもらうのかが分かれ目です。
減額返還は月々の額を下げます。当初の返還月額を2分の1、3分の1、4分の1、3分の2に減額して返還でき、適用期間に応じて返還期間が延長されます。
期間の区切りがあります。1回の願出につき適用期間は12か月で、適用期間終了前に改めて願い出ることで延長でき、通算適用期間は15年(180か月)が限度です。
返還期限猶予は返還そのものを待ってもらいます。一定期間、返還期限を先送りする制度です。
一般猶予には上限があります。適用期間は通算10年(120か月)が限度で、1年ごとに願い出る必要があります。
上限が無い事由もあります。災害、傷病、生活保護受給中、産前休業・産後休業および育児休業、一部の大学校在学、海外派遣の場合は10年の制限がありません。
給付奨学金を返している場合も扱いが違います。機構の案内では、給付奨学金の返還の場合は10年の上限はないとされています。
どちらも「返す総額」は減らない
ここを誤解すると、あとで驚くことになります。どちらの制度も、返す総額そのものは変わりません。
減額返還は期間を延ばすしくみです。毎月返還する割賦金を減額して返還期間を延長するもので、返還予定総額が減額されるわけではないとされています。
第二種奨学金の利子も変わりません。返還期間が延長されても、利子の総支払額は変更ないとされています。
返還期限猶予も同じです。一定期間返還期限を先送りする制度であり、返還すべき元金や利子が免除されるものではないとされています。
機関保証の保証料も追加されません。減額返還では保証期間が延長されますが、保証料の追加徴収はないとされています。
免除になるのは限られた場合です。本人が死亡し返還ができなくなったとき、精神又は身体の障害により労働能力を喪失または高度の制限を有し返還ができなくなったときに、願出により返還未済額の全部又は一部の返還を免除できる制度があります。
家計簿で返還の重さを測る
どちらの制度を選ぶかは、いまの家計でいくらなら続けられるかで決まります。感覚ではなく、記録から出します。
ステップ1返還月額と残りの回数を確かめる10分
スカラネット・パーソナルか返還の案内で、毎月の額と残りの回数を確かめます。残高だけでなく、あと何年続くのかを数字にします。終わりが見えると判断しやすくなります。
ステップ2手取りに占める割合を出す10分
返還月額を手取りで割ります。家賃と合わせて何割になるかまで出すと、重さがはっきりします。
手取りの出し方は年収と手取りの違いにまとめました。額面ではなく手取りで見ます。
ステップ3減額したときの額を先に試す15分
2分の1にしたらいくらか、3分の1ならいくらかを計算して、家計簿に当てはめます。どれなら続けられるかが見えます。
このとき返還期間も延びます。延びた年数を年間収支表の作り方に書き込んで、将来の姿まで見ておきます。
ステップ4証明書をそろえて願い出る30分
経済困難を理由にする場合は、収入・所得を証明する書類が要ります。ただし卒業翌年の6月以降に新たな所得証明書が発行されるまでは、証明書の添付なしで審査可能とされています。
願い出はスカラネット・パーソナルからできます。できない場合は願出用紙を郵送します。
返還の分を生み出すなら、固定費から見る
願い出の前後に、家計の側で返還の分を空けられないかも見ておきます。食費のように毎日動く支出より、通信・保険・サブスクのような毎月決まった支払いのほうが、1回の見直しでその後の毎月の額が変わります。
明細から毎月同じ額が出ていく行を拾い、使っていないオプションや、同じ種類を2つ払っているものがないかを確かめます。拾い方は家計簿の固定費の書き方にまとめました。
減らせた額と返還月額を並べて、制度を使わずに続けられるか、減額返還と組み合わせるかを決めます。生活費全体が足りないときの窓口は生活費が足りないときにまとめました。
返還の案内を出して、毎月の返還月額を確かめてください。その額を手取りで割ると、いまの重さが数字になります。
迷いやすい場面
失業して収入がない
一般猶予の事由には失業中が含まれています。機構の案内では、経済困難・失業中・新卒等・特別研究員などを合わせて通算10年まで猶予を取得できるとされています。
失業保険を受けている間も生活費は要ります。受けられる額は失業保険はいくらもらえる?にまとめました。
病気で働けない
傷病は、猶予取得年数に制限がない事由の1つです。その状態が継続している期間は猶予を続けられます。
働けない間に使える給付もあります。まとめは病気やけがで働けないときのお金にあります。
すでに延滞している
延滞していても願い出る道はあります。願い出の事由に合った証明書が延滞開始年月から全期間にわたって提出できる場合は一般猶予で申請します。
提出できない期間がある場合は別の形になります。機構の案内では、入金後に一般猶予で申請する形と、延滞据置猶予で申請する形が示されています。
減額返還を続けている途中で振替ができなかった
注意が要る決まりがあります。減額返還適用中に2回続けて振替不能となった場合は、延滞発生時に遡って減額返還の適用取消となります。
そのときは元の返還月額で計算されます。適用前の当初返還月額を延滞額として算出した延滞金を加えた額を返還することになります。
よくある質問
Q奨学金が返せないとき、まずどうすればいいですか
延滞する前に日本学生支援機構に願い出ます。減額返還は、願出および審査の時点で延滞していないことが条件です。
Q減額返還ではいくら減りますか
当初の返還月額を2分の1、3分の1、4分の1、3分の2のいずれかに減額できます。返還期間はその分延長されます。
Q返す総額は減りますか
減りません。減額返還も返還期限猶予も、返還予定総額と利子の総支払額は変わらないとされています。
Qどれくらいの収入なら使えますか
減額返還は給与所得の方で年間収入400万円以下、返還期限猶予は300万円以下が目安です。被扶養者がいる場合は控除があります。
Qいつまで使えますか
減額返還は通算15年(180か月)、一般猶予は通算10年(120か月)が限度です。傷病・災害・生活保護受給中などは10年の制限がありません。
Q免除になることはありますか
あります。本人が死亡したとき、または精神・身体の障害で労働能力を喪失もしくは高度の制限を有し返還ができなくなったときに、願出により返還未済額の全部又は一部を免除できる制度があります。
まとめ
- 延滞する前に願い出る。減額返還は延滞していないことが条件
- 減額返還は月々の額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1のいずれかに。通算15年(180か月)まで
- 返還期限猶予は返還そのものを先送り。一般猶予は通算10年(120か月)まで
- 傷病・災害・生活保護受給中・産前産後休業および育児休業などは、10年の制限がない
- 収入の基準は減額返還が年間収入400万円以下、返還期限猶予が300万円以下(給与所得の方)
- どちらも返す総額と利子の総支払額は変わらない。免除は死亡または障害の場合
返還月額と手取りの割合が出れば、どの制度が合うか決められます。今日は返還の案内を出すところから始められます。
この記事で参照した公的情報
- 月々の返還額を少なくする(減額返還制度)(対象・適用期間12か月・通算15年・口座振替加入・月賦返還・返還予定総額は減らない)
- 減額返還制度の概要(2分の1・3分の1・4分の1・3分の2への減額・経済的事由の収入所得金額の目安・延滞していないこと・被扶養者1人につき38万円の控除)
- 返還を待ってもらう(返還期限猶予)(一般猶予は通算10年・災害・傷病・生活保護受給中・産前産後休業および育児休業などは10年の制限なし・元金や利子は免除されない)
- 窓口
- 日本学生支援機構
- 確認日
- 確認先
- https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/index.html
- 減額返還・返還期限猶予リーフレット(令和8年4月版)(経済困難事由の収入等の基準・減額返還は年収400万円以下・返還期限猶予は年収300万円以下・奨学金相談センターの番号)
- 一般猶予の申請事由と必要な証明書(猶予取得年数に制限がないもの=傷病・災害・生活保護受給中・産前産後休業および育児休業・大学校在学・海外派遣/通算10年のもの=経済困難・失業中・新卒等・特別研究員など)
- 死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除(願出により返還未済額の全部又は一部の返還を免除できる)
- 奨学金制度の種類と概要・貸与奨学金(給付奨学金は返済不要・貸与奨学金は返済必要・利子の付かない第一種奨学金と利子の付く第二種奨学金)
- 窓口
- 日本学生支援機構
- 確認日
- 確認先
- https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/index.html
- 返還を始める皆さんへ(返還は貸与終了の翌月から数えて7か月目に始まる・口座振替・第一種奨学金で所得連動返還方式を選択した場合は減額返還制度を利用できない)
- 窓口
- 日本学生支援機構
- 確認日
- 確認先
- https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan/houhou/flow/index.html
- 定額返還方式・割賦方法と返還開始月(月賦返還の1回目の振替日は貸与期間終了の翌月から数えて7か月目の27日・2回目以降は毎月27日・平成29年度以降に第一種奨学金に採用され所得連動返還方式を選択した場合は月賦返還のみ)