国民健康保険料が払えないとき|減免・徴収猶予・軽減の違いと、相談に行く順番

国民健康保険料の通知が来て、この額は払えないと感じることがあります。放っておくと重くなる一方ですが、額そのものを変えられるしくみが法律に用意されています。
この記事では、法定軽減・申請減免・非自発的失業者の軽減・徴収猶予・一部負担金の減免を分けて説明します。根拠の条文と自治体の案内で確かめた内容だけを書きます。
仕事を辞めたあとの国民健康保険料を、いまの収入で払えるのか不安です。払えないときに何ができるのかも分かりません。
払えないまま黙っていると、3つのことが起きる
まず、何もしないとどうなるかを知っておきます。横須賀市の案内では、滞納したときに起きることとして、督促状・催告書の送付、給付の制限、滞納処分、延滞金が示されています。ここでは、督促と延滞金を1つにまとめて見ます。
1つ目は督促と延滞金です。納期限までに納付されない場合は督促状・催告書が送付され、納期限の翌日から完納した日までの日数に応じた延滞金を納めることになるとされています。
2つ目は保険給付の制限です。保険給付の全部または一部を差し止め、療養費・高額療養費・出産育児一時金・葬祭費などを滞納している保険料にあてることがあるとされています。
3つ目は滞納処分です。法律に基づいた滞納処分として、預貯金等の財産差押を実施しているとされています。
どれも、何もしないまま納期限を過ぎると進んでいくものです。その前に窓口へ相談すれば、次の章の道が使えるかを確かめられます。
保険料そのものを下げる3つの道

図は、保険料の額そのものを下げる3つの道です。しくみも、申請が要るかどうかも違います。
1つ目は法定軽減です。所得が一定以下の世帯は、均等割(平等割を取る市区町村では平等割も)が軽減されます。申告さえしていれば申請は要らず、自動で当てはまるのが特徴です。
軽減の割合と所得の条件は国民健康保険料の決まり方にまとめました。自分が当てはまるかは、そちらで確かめられます。
2つ目は申請減免です。国民健康保険法第77条は、市町村及び組合は条例又は規約の定めるところにより、特別の理由がある者に対し保険料を減免し、又はその徴収を猶予することができると定めています。
中身は自治体が条例で決めます。川崎市の案内では、災害減免・生活困窮減免・収入減少減免・給付制限減免の4つが示されています。

図は、申請減免の4つの区分です。川崎市の例で、条件は自治体ごとに違うので自分の市区町村の案内で確かめてください。
生活困窮減免には目安があります。川崎市では、世帯員の実収入見込月額が生活保護法の基準生活費の130パーセントに満たないことと、預貯金の合計額が25万円に世帯員の人数を掛けた額以下であることが条件とされています。
収入減少減免は減り方で見ます。川崎市では、退職・事業の休廃止等により、当年の収入見込みが前年の合計収入金額の10分の7以下に減少した場合などが対象とされています。
3つ目は非自発的失業者の軽減です。倒産・解雇・雇い止めなどを理由に離職した方は、離職された方の給与所得を100分の30として保険料を計算するとされています。雇い止めのときの失業保険の区分は雇い止めのときのお金にまとめました。
この軽減には届出が要ります。雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の離職理由の番号が、11・12・21・22・23・31・32・33・34のいずれかに当てはまる方が対象です。
期間も決まっています。川崎市の案内では、離職日の翌日の属する月から、その月の属する年度の翌年度末までとされています。
保険料の決まり方そのものは国民健康保険料の決まり方にまとめました。法定軽減の7割・5割・2割の条件もそちらにあります。
減免は「納期限の前」に申請する
申請減免には、見落とすと使えなくなる決まりがあります。川崎市の案内では、減免の申請は保険料の納期限内に行うよう示されています。
過ぎた分には効きません。災害減免と給付制限減免を除き、申請時において納期限を経過している保険料および納付済の保険料については減免が適用されないとされています。
つまり「払えないと分かった時点」が動くときです。納期限を待って、払えなかったことを確かめてから行くのでは遅くなります。
持っていくものは区分で変わります。川崎市の生活困窮減免では、世帯全員の収入額が分かる書類、預貯金が分かるもの、困窮した理由が分かるもの(診断書など)が挙げられています。
区分ごとに違う書類もあります。災害減免は罹災証明書、収入減少減免は退職証明書や資産が分かるもの、給付制限減免は在所(監)証明書で、どの区分にも被保険者番号が分かるものが要ります。罹災証明書で変わるほかの支援は罹災証明書は何に使う?にまとめました。
減免が通らなかったときの道もあります。国民健康保険法第77条は、減免と並べて「その徴収を猶予することができる」と定めていて、納める時期を後ろにずらす相談ができます。
窓口で払う医療費も、減額・免除できることがある
保険料とは別に、病院の窓口で払う自己負担にも救済があります。国民健康保険法第44条にもとづく一部負担金の減免です。
条文は3つの措置を挙げています。一部負担金を減額すること、支払を免除すること、保険医療機関等への支払に代えて直接に徴収することとしその徴収を猶予することです。
対象は限られます。特別の理由がある被保険者で、一部負担金を支払うことが困難であると認められる方に対して市町村及び組合が採ることができる措置と定められています。
運用は自治体ごとです。基準や申請の方法は市区町村の国民健康保険の窓口で確かめます。
医療費が高額になったときは別のしくみもあります。1か月の上限を超えた分が戻る高額療養費制度はいくらからとあわせて確かめてください。無料低額診療事業や高額療養費の貸付など、医療費そのものが払えないときの道は医療費が払えないときにまとめました。
国民年金の保険料も払えないとき
会社を辞めて国民健康保険に入った20歳以上60歳未満の人は、国民年金の第1号被保険者として保険料を自分で納めることがあります。払えないのが2つ重なったときは、それぞれの道を分けて確かめます。
窓口も軽くする道も別です。国民健康保険は市区町村が扱い、国民年金は日本年金機構が扱います。国民年金の免除の申請先は、市区町村の国民年金担当窓口か年金事務所です。
未納のままにしたときの流れは似ています。日本年金機構の案内では、払える力がありながら納付の案内に応じない場合は、最終催告状・督促状が送られ、その期限までに納めないと財産の差押えが行われ、延滞金もかかるとされています。
国民年金では、世帯主と配偶者にも連帯して納める義務があり、督促状や差押えはその人たちにも及びます。督促状の期限を過ぎると、差押えに進みます。
国民年金には、保険料の免除と納付猶予があります。免除は全額・4分の3・半額・4分の1の4種類で、失業や倒産などの事実を確かめられるときは、前年の所得にかかわらず免除や納付猶予を受けられる特例があります。
申請はさかのぼれます。日本年金機構の案内では、納付期限から2年を経過していない期間、つまり申請の時点から2年1か月前までの分を申請できます。川崎市の申請減免が、納期限を過ぎた分に効かないのとは違います。
未納と免除では、あとの扱いも変わります。全額免除の期間は、老齢基礎年金の額に全額納付の2分の1が反映されますが、手続きをせずに未納になった期間は反映されません。
2つとも払えないときは、窓口を2か所回ります。免除の種類と所得の基準、障害基礎年金や遺族基礎年金への影響は国民年金の保険料が払えないときにまとめました。
相談に行く順番と、家計簿での備え
窓口では、いくらなら払えるかを聞かれることがあります。答えられる状態にしてから行くと、話が進めやすくなります。
ステップ1通知書といまの収入を並べる20分
保険料の通知書と、いまの月の収入が分かるものを並べます。前の年の所得で計算されているので、いまの収入との差がそのまま相談の材料になります。
給与明細の読み方は給与明細の見方にまとめました。手取りの出し方はそちらにあります。
ステップ2毎月必ず出ていくものを一覧にする20分
家賃・水道光熱費・通信費など、削れないものを明細から拾います。この一覧があると、残せる額を窓口で示せます。
拾い方は家計簿の固定費の書き方にまとめました。引き落としの記録から拾うのがこつです。
ステップ3納期限を先に控える5分
減免は納期限を過ぎると効きません。通知書に書かれた納期限を、家計簿かカレンダーに先に書き込みます。
年払いのものと同じ扱いにします。書き方は特別費は思い出さずに明細から拾うにまとめました。
ステップ4市区町村の国民健康保険の窓口に相談する60分
市区町村の国民健康保険の担当課が窓口です。川崎市では区役所の保険年金課で、課の名前は市区町村で違います。電話で「保険料が払えない」と伝えて、どの制度が使えるかを一緒に確かめます。
生活全体が苦しいときは、自立相談支援機関でもまとめて相談できます。使える制度は生活費が足りないときにまとめました。住民税も払えないときの猶予と分納は住民税が払えないときにまとめました。
保険料の通知書を出して、納期限の日付を確かめてください。その日が来る前に窓口へ相談すれば、申請減免の申請に間に合います。
窓口と制度は、公的機関のページで確かめる
減免も軽減も、決めているのは法律と市区町村です。条文と自治体の案内は、この記事のリンクから直接たどれます。
- 条件・金額・申請の方法は、各制度の公式サイトとお住まいの自治体の窓口で確かめてください
制度の条件や金額は、年度ごとに変わることがあります。最後は公的機関のページと窓口で確かめてください。
迷いやすい場面
自分から辞めたので非自発的失業にあたらないと思っている
自己都合の退職でも対象になることがあります。新宿区の案内では、特定受給資格者(11・12・21・22・31・32)と特定理由離職者(23・33・34)が対象とされていて、31から34は正当な理由のある自己都合退職です。
決めるのは自分の判断ではありません。対象は雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の離職理由の番号で判定されるので、ハローワークの手続きをしてから番号を持って窓口に行きます。
番号が対象外だったときも道があります。収入が大きく減っていれば、申請減免の収入減少減免に当てはまることがあります。
すでに滞納していて督促が来ている
滞納があっても相談はできます。減免は納期限を過ぎた分に効きませんが、これから来る納期の分には間に合います。
徴収猶予の相談もできます。国民健康保険法第77条は減免と徴収猶予の両方を定めていて、納める時期をずらす道が用意されています。
会社の健康保険を続けるか迷っている
退職時には、会社の健康保険を続ける任意継続という選択肢もあります。期間や保険料の出し方、どちらが安いかの比べ方は健康保険の任意継続とはにまとめました。
決める期限が短い点に注意が要ります。先に両方の保険料を出してから選びます。
病院に行きたいが窓口の負担が払えない
国民健康保険法第44条にもとづく一部負担金の減免があります。減額・免除・徴収猶予の3つの措置が条文に定められています。
運用は自治体ごとに違います。受診の前に、市区町村の国民健康保険の窓口に相談します。
減免や猶予を受けても暮らしが成り立たない
減免や分割の相談をしても生活費が足りないなら、福祉事務所の生活保護の窓口も相談先です。厚生労働省の案内では、世帯の収入が最低生活費に満たない場合に保護が適用され、差額が保護費として支給されるとされています。
生活保護を受けると、国民健康保険から外れます。国民健康保険法第6条は、生活保護法による保護を受けている世帯に属する者を被保険者としないと定めています。
医療は医療扶助に切り替わり、費用は直接医療機関へ支払われるので本人負担はありません。国民年金も、生活扶助を受けている人は法定免除の対象になります。
受ける前に滞納していた保険料の扱いは、市区町村の国民健康保険の窓口で確かめます。受けられる条件と申請の流れは生活保護の条件にまとめました。
よくある質問
Q国民健康保険料が払えないとき、まずどうすればいいですか
市区町村の国民健康保険の窓口に相談します。納期限が来る前に行けば、申請減免を申請できるかを確かめられます。
Q減免と軽減は何が違いますか
法定軽減は所得が一定以下なら自動で当てはまります。申請減免は自治体の条例で決まっていて、申請しないと始まりません。
Q会社を辞めた場合はどうなりますか
倒産・解雇・雇い止めなどによる離職なら、給与所得を100分の30として計算する軽減があります。届出が要ります。
Q滞納するとどうなりますか
督促状・催告書が届き、延滞金が加算されることがあります。保険給付の差し止めや、預貯金等の財産差押が行われることもあります。
Q分割で払うことはできますか
納付の相談は窓口で受け付けています。国民健康保険法第77条には徴収の猶予も定められていて、納める時期をずらす相談ができます。
Q病院の窓口で払うお金も安くなりますか
国民健康保険法第44条にもとづく一部負担金の減免があります。減額・免除・徴収猶予の3つの措置が定められています。
まとめ
- 滞納を放っておくと、督促と延滞金・保険給付の差し止め・財産差押が進む
- 保険料を下げる道は3つ(法定軽減は自動、申請減免と非自発的失業者の軽減は申請・届出が要る)
- 申請減免の根拠は国民健康保険法第77条。中身は自治体の条例で決まる
- 申請減免は納期限を過ぎた分には適用されない。払えないと分かった時点で相談する
- 倒産・解雇・雇い止めによる離職は、給与所得を100分の30として保険料を計算する
- 窓口で払う医療費も、国民健康保険法第44条で減額・免除・徴収猶予ができる
納期限の前に窓口へ行けば、使える道が残ります。今日は通知書を出して、納期限を確かめるところから始められます。
この記事で参照した公的情報
- 国民健康保険法第77条(保険料の減免・徴収の猶予)・第44条(一部負担金の減額・免除・徴収猶予の3つの措置)・第6条第9号(生活保護法による保護を受けている世帯に属する者は被保険者としない)
- 窓口
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 確認日
- 確認先
- https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192
- 国民健康保険料の減免制度(災害減免・生活困窮減免・収入減少減免・給付制限減免の対象と必要書類・納期限内の申請・相談窓口)
- 非自発的な理由により離職された方に対する保険料の軽減制度(給与所得を100分の30として計算・軽減期間・離職理由の番号・雇用保険受給資格者証)
- 非自発的失業者の国民健康保険料の軽減について(特定受給資格者11・12・21・22・31・32/特定理由離職者23・33・34・前年の給与所得を100分の30として算定)
- 保険料を滞納すると(督促状・催告書・延滞金・保険給付の差し止めと充当・預貯金等の財産差押)
- 日本年金機構の取り組み(国民年金保険料の強制徴収)(第1号被保険者の納付義務・世帯主と配偶者の連帯納付義務・納付期限は翌月末日・最終催告状・督促状・財産の差押え・延滞金)
- 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(全額・4分の3・半額・4分の1・失業等による特例免除・申請時点から2年1カ月前までの期間を申請できる・全額免除期間は2分の1が年金額に反映・申請書の提出先は市区町村の国民年金担当窓口か年金事務所)
- 国民年金保険料の法定免除制度(生活保護の生活扶助を受けている方)
- 生活保護制度(収入が最低生活費に満たない場合に保護・差額を保護費として支給・医療扶助は費用を直接医療機関へ支払い本人負担なし・相談申請窓口は福祉事務所)
- 国民健康保険法施行令 第29条の7(保険料の賦課額:賦課総額は「所得割・資産割・被保険者均等割・世帯別平等割」「所得割・被保険者均等割・世帯別平等割」「所得割・被保険者均等割」のいずれかによる)
- 窓口
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 確認日
- 確認先
- https://laws.e-gov.go.jp/law/333CO0000000362