病気やけがで働けないときのお金|傷病手当金・障害年金・医療費と保険料の軽減

病気やけがで働けなくなると、収入が止まるのに医療費は増えます。この二重の負担に対して、公的なしくみは方向の違うものがいくつも用意されています。
この記事では、収入を支えるもの・医療費を軽くするもの・払うものを止めるものに分けて並べます。どれも公的機関の案内で確かめた内容です。
病気で働けなくなったら、収入が止まったまま医療費だけが増えていくのが怖いです。治療が長引くときに、何から確かめればよいのかも分かりません。
使えるものは3つに分けて考える
働けないときのしくみは、目的が3つに分かれます。条件が合えば、目的の違うものを重ねて使えることもあります。
1つ目は収入を支えるものです。傷病手当金・障害年金・労災保険の給付などが当てはまります。
2つ目は医療費を軽くするものです。高額療養費制度と自立支援医療が代表です。
3つ目は払うものを止める・軽くするものです。国民年金の法定免除、国民健康保険料の減免、奨学金の返還期限猶予などがあります。
どこから相談するかも決めておきます。会社員なら勤め先と健康保険、自営業や無職なら市区町村の窓口が入口です。
働けない理由と、加入している保険で変わる

図は、働けない理由と加入している保険で、どれが当たるかを分けたものです。まず自分がどの線にいるかを確かめます。
仕事や通勤が原因なら労災保険です。厚生労働省の案内では、労災保険制度は労働者の業務上の事由または通勤による傷病等に対して必要な保険給付を行う制度とされています。
雇用形態は関係ありません。労災保険における労働者とは職業の種類を問わず事業に使用され賃金を支払われる者で、アルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ないとされています。
費用は会社が負担します。その費用は原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれているとされていて、本人の保険料はかかりません。
仕事が原因でない病気やけがは別のしくみです。会社の健康保険に入っていれば傷病手当金があり、額と期間は傷病手当金はいくら?にまとめました。
国民健康保険では傷病手当金は任意給付です。国民健康保険法第58条第2項は、市町村及び組合は条例又は規約の定めるところにより傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができると定めています。必ず支給されるものではないので、加入している国民健康保険の窓口で確かめます。
自営業やフリーランスの方は別の道になります。次の章の障害年金と、医療費を軽くするしくみが中心です。
傷病手当金の額と、申請書の出し方
全国健康保険協会(協会けんぽ)の案内では、傷病手当金は4つの条件を満たしたときに支給されます。業務外の病気やけがで療養していること、仕事に就けないこと、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、休んだ期間に給与が支払われていないことです。
最初の連続3日間は待期と呼ばれ、有給休暇や土日・祝日などの公休日も数えられます。支給は4日目からで、2日休んで3日目に働いたときは待期が成り立ちません。
1日あたりの額は「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2」です。協会けんぽが示している例では、12か月の平均が17万円なら、30で割り10円未満を四捨五入して5,670円、3分の2を掛けて1日3,780円になります。
加入して12か月に満たない人は、別の2つの額のうち低いほうで計算します。給与が一部出ているときは、傷病手当金の額より少なければ差額が支給されます。期間は、支給を始めた日から通算して1年6か月です。
申請は「健康保険傷病手当金支給申請書」を、加入している協会けんぽの支部に出します。申請書には、療養を担当する医師の意見と、休んだ期間の給与についての事業主の証明が要ります。
健康保険組合に入っている人は、組合の申請書と案内で確かめてください。待期の数え方と、振り込みまでの家計簿での備え方は傷病手当金はいくら?にまとめました。
長く続くときは、障害年金を確かめる

図は、障害年金の額です。日本年金機構の案内では、障害年金は病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金とされています。
2つの種類があります。初めて医師の診療を受けた日(初診日)に国民年金に加入していたなら障害基礎年金、厚生年金に加入していたなら障害厚生年金を請求できます。
障害基礎年金の額は決まっています。令和8年4月分からは、昭和31年4月2日以後生まれの方で1級が1,059,125円、2級が847,300円です。昭和31年4月1日以前生まれの方は1級1,056,125円、2級844,900円です。
子がいると加算されます。2人までは1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円です。
障害厚生年金は報酬で決まります。1級は報酬比例の年金額の1.25倍、2級は報酬比例の年金額で、どちらも配偶者の加給年金額(243,800円)が付くことがあります。
3級と一時金もあります。2級に該当しない軽い程度の障害のときは3級の障害厚生年金(最低保障額635,500円)があり、初診日から5年以内に治って軽い障害が残ったときは障害手当金があります。
保険料の納付要件があります。初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上が納付または免除されていることが原則です。
直近1年で見る特例もあります。初診日が令和18年3月末日までのときは、初診日において65歳未満であれば直近1年間に未納がなければよいとされています。
20歳前は要件が違います。20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。
あとから重くなった場合も請求できます。障害認定日に該当しなかった方でも、その後症状が悪化して法令に定める障害の状態になったときは、請求日の翌月から受給できる事後重症による請求があります。
医療費そのものを軽くするしくみ
収入が止まっているときほど、医療費の上限を先に知っておくことが大事です。2つのしくみがあります。
1つ目は高額療養費制度です。1か月に窓口で払う額が上限を超えた分が戻り、令和8年8月からは年単位の上限も設けられました。
上限額は所得で決まります。詳しい表は高額療養費制度はいくらからにまとめました。
2つ目は自立支援医療です。厚生労働省の案内では、患者の負担が過大なものとならないよう、所得に応じて1月当たりの負担上限額を設定するとされています。
対象は3つに分かれます。精神通院医療・更生医療・育成医療で、通院による精神医療を続ける必要がある方も対象です。
上限額は所得区分で変わります。市町村民税非課税(低所得2)は5,000円、本人または障害児の保護者の年収82.65万円以下(低所得1)は2,500円、生活保護世帯は0円です。
重い負担が続く方には別枠があります。費用が高額な治療を長期にわたり継続しなければならない「重度かつ継続」に当たる方には、さらに軽減措置が実施されます。
月額総医療費の1割が上限に満たない場合は1割です。負担が上限額より小さいときは、そちらが適用されます。医療費の支払いそのものが難しいときは医療費が払えないときにまとめました。
払うものを止める・軽くするしくみもある
入ってくるお金を増やすだけでなく、出ていくお金を止める道もあります。こちらは申請しないと始まりません。
国民年金には法定免除があります。障害基礎年金または障害厚生年金(障害等級1級・2級に限る)を受ける方は、国民年金保険料が免除されます。
手続きが要ります。国民年金第1号被保険者の方は、障害基礎(厚生)年金の年金証書が届いたら市区役所または町村役場に相談します。
障害年金を受けている方への上乗せもあります。障害年金生活者支援給付金は、1級で月額7,025円、2級で月額5,620円です。
所得の基準があります。前年の所得額が「4,794,000円+扶養親族の数×38万円」以下であることが要件で、障害年金等の非課税収入は判定に用いる所得に含まれません。
国民健康保険料にも減免があります。長期にわたる病気・けが等を理由とする生活困窮減免などで、詳しくは国民健康保険料が払えないときにまとめました。
奨学金の返還も待ってもらえます。日本学生支援機構の案内では、返還期限猶予(一般猶予)は通算10年が限度ですが、傷病の場合はこの10年の制限がありません。
生活そのものが成り立たないときは、市区町村の自立相談支援機関で相談できます。使えるものは生活費が足りないときにまとめました。
それでも暮らしが成り立たないときは、生活保護があります。厚生労働省の案内では、預貯金や不動産などの資産、働く能力、年金などほかの制度の給付を先に活かし、親族からの援助も確かめたうえで、収入が最低生活費に満たないときに保護が適用されます。
支給されるのは、最低生活費から年金や働いた収入などを引いた差額です。医療扶助は費用が医療機関へ直接支払われるので、本人の負担はありません。
相談と申請の窓口は、住んでいる地域の福祉事務所です。事前の相談のあとに申請すると、資産や収入、親族からの援助などの調査があります。条件と保護費の決まり方は生活保護の条件にまとめました。
家計簿でやること
収入が止まると、何にいくらかかっているかを把握する余裕がなくなります。だからこそ先に形を作っておきます。
ステップ1入ってくるお金の見込みを月ごとに並べる20分
傷病手当金・障害年金・給付金は、振り込まれる時期がばらばらです。いつ、いくら入るのかを月ごとに並べます。
年金は偶数月です。受け取りの周期は年金はいつから?にまとめました。
ステップ2医療費の上限を書いておく15分
高額療養費の上限額と、自立支援医療の上限額を調べて書き出します。上限が分かると、月の医療費の見込みが立ちます。
医療費の記録の残し方は医療費の平均は月いくら?にまとめました。控除のために残すものもそちらにあります。
ステップ3止められる支払いを一覧にする20分
保険料・奨学金・通信費など、止めたり軽くしたりできるものを一覧にします。それぞれの窓口も横に書いておきます。
一覧の作り方は家計簿の固定費の書き方にまとめました。明細から拾うのがこつです。
ステップ41枚にまとめて、足りない月を見つける15分
入ってくる見込みと、出ていく見込みを月ごとに並べます。足りない月が分かれば、先に相談に行けます。
形は年間収支表の作り方にあります。長引くときほど、この1枚が効きます。
診察券やお薬手帳を出して、初めてその病気で医師の診療を受けた日を確かめてください。障害年金の判定は、その日を基準にします。
窓口と制度は、公的機関のページで確かめる
この記事で挙げた給付と軽減は、どれも公的機関のページから直接たどれます。リンクをそのまま開いて、自分に当てはまるかを確かめてください。
- 条件・金額・申請の方法は、各制度の公式サイトとお住まいの自治体の窓口で確かめてください
制度の条件や金額は、年度ごとに変わることがあります。最後は公的機関のページと窓口で確かめてください。
迷いやすい場面
傷病手当金が終わりそう
傷病手当金は通算1年6か月です。終わる時期が見えたら、障害年金の請求ができるかを年金事務所に相談します。同じ傷病で障害年金を受けると、傷病手当金は調整され、差額だけになることがあります(協会けんぽの案内)。
障害認定日に該当しなかった場合も道があります。その後に症状が重くなったときは、事後重症による請求ができます。
自営業で傷病手当金が無い
国民健康保険では傷病手当金は任意給付で、法律で必ず支給されるものではありません。支給が無いときは、障害年金・医療費の軽減・保険料の減免を組み合わせる形になります。
国民年金の保険料そのものも免除や猶予が使えます。条件は国民年金の保険料が払えないときにまとめました。
退職したあとに病気が分かった
初診日にどの制度に入っていたかで、障害基礎年金か障害厚生年金かが決まります。退職後でも、初診日が在職中なら障害厚生年金の対象です。
健康保険を任意継続する選択肢もあります。比べ方は健康保険の任意継続とはにまとめました。
仕事が原因かどうか分からない
仕事や通勤が原因かどうかで、労災保険か健康保険かが変わります。判断に迷うときは、手続きに進む前に労働基準監督署に相談します。
よくある質問
Q病気で働けないとき、まず何が使えますか
会社員なら傷病手当金です。仕事や通勤が原因なら労災保険、長く続くときは障害年金を確かめます。
Q障害年金はいくらもらえますか
障害基礎年金は令和8年4月分から、昭和31年4月2日以後生まれの方で1級1,059,125円、2級847,300円です。障害厚生年金は報酬比例で決まり、3級の最低保障額は同じ生まれで635,500円です。
Q自営業でも受けられますか
障害基礎年金は受けられます。ただし国民健康保険の傷病手当金は任意給付で、必ず支給されるものではないため、医療費の軽減と保険料の減免を組み合わせます。
Q年金の保険料はどうなりますか
障害基礎年金または障害厚生年金の1級・2級を受ける方は、国民年金保険料が法定免除になります。年金証書が届いたら市区町村に相談します。
Q通院の医療費を安くできますか
自立支援医療があります。所得に応じて1月当たりの負担上限額が設定され、市町村民税非課税なら5,000円または2,500円です。
Qあとから障害が重くなった場合はどうなりますか
事後重症による請求ができます。請求日の翌月から受給でき、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。
まとめ
- 使えるものは3つ(収入を支える/医療費を軽くする/払うものを止める)
- 仕事や通勤が原因なら労災保険。アルバイトやパートタイマーも対象で、保険料は事業主の負担
- 会社の健康保険なら傷病手当金。国民健康保険の傷病手当金は任意給付で、必ずあるものではない
- 障害基礎年金は令和8年4月分から1級1,059,125円・2級847,300円(昭和31年4月2日以後生まれ)。子の加算あり
- 障害年金の1級・2級を受けると、国民年金保険料が法定免除になる
- 自立支援医療は所得に応じて月の上限額が決まる。非課税世帯は5,000円または2,500円
初診日と加入していた制度が分かれば、どの給付に当たるかが決まります。今日は診察券を出して初診日を確かめるところから始められます。
この記事で参照した公的情報
- 障害年金(障害基礎年金と障害厚生年金の違い・初診日・保険料納付要件・障害年金1級2級を受ける方は国民年金保険料が法定免除)
- 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(令和8年4月分から)(1級1,059,125円・2級847,300円・子の加算・障害認定日による請求と事後重症による請求)
- 障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額(令和8年4月分から)(1級は報酬比例の1.25倍・3級の最低保障額635,500円・障害手当金・300月みなし)
- 障害年金生活者支援給付金の概要(1級7,025円・2級5,620円・前年の所得額4,794,000円+扶養親族の数×38万円以下)
- 自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み(所得区分ごとの自己負担上限月額・低所得2は5,000円・低所得1は2,500円・生活保護は0円・重度かつ継続・月額総医療費の1割)
- 窓口
- 厚生労働省
- 確認日
- 確認先
- https://www.mhlw.go.jp/content/001718390.pdf
- 国民健康保険法第58条第2項(市町村及び組合は、条例又は規約の定めるところにより、傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができる=任意給付)
- 窓口
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 確認日
- 確認先
- https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192
- 労災補償(労災保険制度とは=業務上の事由または通勤による傷病等に対する保険給付・費用は原則として事業主の負担・アルバイトやパートタイマーも対象)
- 傷病手当金(支給される4つの条件・待期3日・1日当たりの金額の計算式と計算例・支給期間は通算1年6か月)
- 窓口
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 確認日
- 確認先
- https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 生活保護制度(資産・能力・他の制度の活用と扶養・最低生活費から収入を引いた差額を支給・医療扶助は本人負担なし・福祉事務所での相談と申請・調査)
- 返還を待ってもらう(返還期限猶予)(一般猶予は通算10年(120か月)が限度・災害・傷病・生活保護受給中・産前産後休業と育児休業などは10年の制限がない)/傷病(一般猶予の申請事由)(1回の願出につき最大12か月・事由が続く間は繰り返し願い出られる・取得年数の制限はない)
- 窓口
- 日本学生支援機構
- 確認日
- 確認先
- https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/index.html
- 傷病手当金を受けている方へ(同一(関連)の傷病で傷病手当金と障害年金を受けられる場合は、障害年金の金額に応じて傷病手当金を調整・健康保険法第108条・障害年金の年額÷360日が傷病手当金の日額より少なければ差額を支給・重なった期間は返金の場合あり)
- 窓口
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)愛媛支部
- 確認日
- 確認先
- https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/ehime/assets/shoute_nennkinntyousei.pdf